日々是好日

株式会社ARTLOGUE CEO/編集長 鈴木大輔のブログです。

終戦記念日と鎮魂と『ゆきゆきて、神軍』

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8月15日の終戦記念日に大阪護國神社の「献灯みたままつり」に行ってみた。

右傾化しているという噂の日本。ネトウヨなど台頭しているように感じるので、靖國神社のようにアレな方々が沢山いらっしゃるのかと思いきや、そんな方々は一人もいないどころか、驚くほど人が少ない。
昼に行われた「英霊感謝祭」にはもっと人が集まったようだが、夜の「献灯みたままつり」は的屋もたった3軒のみで祭り感がまるでなく境内はかなり寂しい。

境内にはなかなかファンキーなデザインの陸海空軍ごとの慰霊碑の他、部隊ごとや、軍馬、軍犬、軍鳩の慰霊碑もある。慰霊碑の多くには「つわもの」「英霊」と言った類いの勇ましい言葉が乱舞する。

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18時30分から盆踊りが始まると書いてあったので、境内で手持ち無沙汰に待っていると、ひとりのお婆ちゃんが「もうすぐ、本殿で巫女さんが綺麗な舞を踊ってくれるからどうですか」と声をかけてくれた。
聞けば、当時高校生くらいだったいとこを戦地で亡くした遺族だという。
本殿の向かって右側は盆踊りを踊る婦人会の方々がぎっしりいるものの、対する左手遺族席には我々夫婦を合わせてもたったの4人(最後の方で2人増えた)しかいない。
昔はこの祭りにも人が沢山来ていたらしいが、遺族の高齢化とともに訪れる人も減少しているとのことだ。

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「英霊」という戦死者を美化した言い方は個人的には好きではないが、馬、犬、鳩なども同様に感謝し鎮魂しようとする心はいいと思う。

ネットやTVから伝わる靖國神社の喧騒とは打って変わって、こちらの儀式や盆踊りは静かで鎮魂に相応しい雰囲気だ。一体、ネット上でけたたましく騒いでいる人たちは何処へ行ったのか。”英霊”に感謝、鎮魂もせずに保守といえるのだろうか。

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帰宅後、もう少し戦争のことを知りたいと思い、前々から気になっていた『ゆきゆきて、神軍』を観た。


ゆきゆきて、神軍』はアクティビストの奥崎謙三がかつて所属していた独立工兵隊第36連隊のウェワク残留隊で、上官による部下の射殺事件があったことを知り、処刑に関与した元軍人たちを問い詰めるという内容のドキュメンタリー映画だ。
田中角栄を殺す」と書かれた街宣車に乗り、暴力を使ってでも関係者に証言させるなど、奥崎の奇行が目につくが、それが霞むほどにこの映画は第二次世界大戦中の異常さを際立たせる。

「食人のための部下の射殺」「黒豚(現地人)、白豚(白人)」など、当事者から事実を聞き出していることは価値がある。
ゆきゆきて、神軍』の公開が1987年なので、30年前になる。おそらくこの映画に登場している方々のほとんどがこの世にいないのだろう。戦争がどれほど狂っているかを伝えるためにも、一刻も早くより多くの証言をとっておくべきだ。

奥崎の奇行・言動、証言の内容など、色んな意味でこの映画『ゆきゆきて、神軍』は観る価値があると思うのでオススメだ。

さらっと内容を知りたい人は、こちらのレビューをどうぞ。
http://www.st.rim.or.jp/~r17953/impre/Movie/OKU_1.html


また、この時期にもあまり話が出てこないが、第二次世界大戦中には日本国中がイケイケ状態だったことを考えると終戦間近は別としても、戦時中に相当利益を得ていた人たちもいるのではないのだろうか。(戦争に疑問を持っていた人もいただろうが)
軍需産業はもちろんのこと、新聞やメディアも戦争を煽れば売れただろうし。そういった利益を得た、謂わば戦争の共犯関係にあった人たちの証言も取り、過度に利益を追求すると戦争を助長することにまでなるということの検証も必要ではないだろうか。

個人的には悲惨さだけを伝えるのではなく、多角的な検証によってこそ戦争を抑止する方法が見つかるのではないかと思う。

日本は72年間も戦争のない平和な日々を過ごしてきたが、北朝鮮のミサイル開発や、中国の海洋進出など、こちらが望まなくても軍靴は近づいて来る。

終戦記念日に戦争のない世界を願う。